第1章 自己紹介は己の人生を決める大事なセレモニー
現在新選組ではある緊急の命が下されて騒然としていた。それは、近年急激に増えた女子供の一連の誘拐事件について犯人を粛清せよというお上直々の指令だった。
近藤と土方は急遽隊士たちを集めて緊急会議を開く。
「あー、皆も予め耳にしているかもしれないが、幕府直々の緊急命令が降った。近年、急激に増加した女子供の誘拐についてついにその重い腰を上げる気になったらしい。皆、心して取り掛かるように」
元々、幕府はこの件に余り乗り気ではなく数年間放置していたので、ここまで悪化するに至ったのは幕府の責任によるものが大きい。新選組も捜査を自粛せざるをえなかった今、この機会は絶好の好機と言える。
なぜ乗り気ではなかったのは説明するまでもないだろう。幕府の上層部がこの一件に絡んでいる可能性が十分にあるからだ。だが、社会問題と化し多くのメディアの目下に晒されてしまった今では隠し通すのも時間の問題となり、批判も相当数寄せられているという。
「けど、おかしいですぜ。今まで腰を上げようとしなかった奴らが今回いきなり俺らに依頼たァ、何か裏があるんじゃねぇですかぃ。たかが批判くらいで身内は売らねぇでしょう?」
沖田が土方に気怠そうに質問を投げかける。それに近藤が難しい顔をしながら答えた。
「うむ……確かに今回の件に関しては我々もまだ完全に飲め込めない点もある。だが、これはお上からの命令だ。侍として答えんことにはいかんだろう」
「ま、近藤さんが言うなら俺ァそれに従いまさァ」
予め答えが分かっていたかのように沖田は仕方がなさそうに、だが大して気にもしてなさそうに肩をすくめて笑う。
土方はそれを確認して周囲を見渡し告げた。
「他に何か質問のある者はいるか……いないな。よし、総員昼夜のパトロールを強化。特に女子供の動向には細心の注意を払え。もし敵の手がかりを掴んだら直ちに応援を仰げ。絶対に一人で動くんじゃねぇぞ。動いたら切腹な。分かったな!!」
「はい!!!」
「解散!!」
そう勢い付けて会議は一先ずの終わりを告げた。隊士はそれぞれ各々の持ち場に着き厳重体制での警備を開始する。