第3章 取り調べにカツ丼なんか出ません
「……あの、でももう十分休みましたし仕事をさせていただけませんか?」
かれこれ十日は立っているからいい加減寝て起きてタダ飯を頂く生活は申し訳ない。
「真面目すぎんでィ、おめぇは」
「ったく、誰かに聞かせてやりてぇくらいだぜ」
「何か言いやしたか?」
「いや、何にも。どっかのサボリ魔の顔を殴ってやりたくなったところだ」
「そりゃ奇遇でさァ。俺も今タバコを吹かしている男を殺したくなったところだァ」
「やめんか二人とも!」
喧嘩勃発寸前の二人に近藤さんが仲裁に入る。
「あの二人って……仲が悪いんですか?」
「本当はいい奴らなんだがなぁ」
なんだかんだでお世話好きな近藤さん。笑ながらもその笑みからは愛情が覗き見えている。
三人は、私の知らない絆で繋がれている。その絆はひどく眩しくて、強固で。突然入ってきた私などが入る余地もないくらい。
「あの、聞いてもいいですか?」
「あ?」
「私って、記憶をなくす前はどんな生活をしていたんですか?」
「……」
ある程度その質問を察していたかのようにあたりが静まる。
沖田さんが、静かなその空気を破って答えた。
「お前は知らなくていい」
冷たくあしらう様なその瞳に、心が掴まれて動けなくなる。何か、踏み込んではいけない警戒心のようなものが鳴り響いて。
あたりの空気が痛いほど苦しい。
でも、私だって引き下がりたくない。
「……っ私のことです!……知りたいです」
「知らなくていいっつってんだ。わざわざ首突っ込むんじゃねぇ。鬱陶しい」
そこまで言うことないじゃないですか。
相変わらずのその無表情が、今はひどく遠く感じた。
私、嫌われているのかな。
でも、あの時ここにいることを真っ先に許してくれたのも沖田さんだった。
一体、この人は何を考えているの。