第3章 取り調べにカツ丼なんか出ません
だが、違ったのはその扱われ方が奴隷のそれだった。歯向かえば殴られ、あまつさえ殺されることだってある。
雇い主の機嫌が良くない日には当て付けに様々な暴行を加えられ、奴隷同士での虚しい虚栄心を満たすために虐めも蔓延った。衛生状況も最悪で、集団感染などざらにあることだ。
そんな状況で怯えて暮らしている上に、私達はどうやら商品として売買されるということをどこからか聞いた。
奴隷となった人の数も多かったために、私たちの人権は奪われたままで衛生状況も一向に改善されることはなかった。ただ、その中でも金になる人はやっぱり区別をさせられていたらしい。私も偶然その中の一人で、幸い体の衛生面や命の危険は免れたがそれでも恐怖に支配された日々ではあった。
そして、私が売り出されようとしたその日。
必死の思いで船の外に飛び出して身投げをした。
今に至る経緯を話していれば、近藤さんは辛かっただろうと、労わるような眼差しで話を聞いてくれた。土方さんはポーカーフェイスを決め込んでて、タバコをふかしたまんま普通に話を聞いている。
沖田さんは、興味なさげに無表情。
あまり快くなかったであろう身の上話を話し終えて、一息つく。
「ごめんなさい、こんな重い話で……」
「なんでお前が謝るんでィ、馬鹿」
「いえ、気分を害してしまったんじゃないかって」
もう馬鹿は固定なのか。
「辛かっただろう……楓さん、これからはここが君の家だと思ってくれて構わないからね」
「はい、ありがとうございます!」
「ま、聴きだすべきことは全部聴き出せたんだ。そろそろ休ませてもいいだろ」
「うむ、そうだな!いきなりで申し訳なかった。ゆっくり休んでくれ!」