第3章 取り調べにカツ丼なんか出ません
体が随分と良くなって数日後、私はあの三人の元で取り調べを行った。
「もういいのか」
「はい、随分と体も良くなりましたから」
連れてこられた先は無機質な灰色の部屋。いかにもという感じだ。
「俺たちがお前を保護したのは、昔の知り合いだからってだけじゃない。お前が今俺らが管轄している誘拐事件の被害者でもあり重要参考人だからだ」
「誘拐事件……?」
土方さんが説明をする。
「近頃急激に増えてきたんでな。幕府側から犯人の取り締まりを依頼されている。その犯人を捕まえるには実際にそこにいたお前という証拠、参考人が必要不可欠なんだ。てめぇにゃ昔の思い出引き摺り出すことになっちまうが、平気か?」
「……はい、大丈夫です。少しでもお役に立てるのでしたら」
ここにおいてくれたお礼を少しでも返したい。
例えそれが仕事だったとしても構わなかった。記憶にないこの人たちの私への気持ちに報いることができるのなら。
それは決してドラマとかで見る厳しいものではなく、気を使ってくれたのか私の気持ちを最大限に尊重してくれた取り調べだった。
そこで、成り行きとはいえ過去を全て話すこととなった。
記憶があるのは両親が血に塗れて倒れていた時点から。その後しばらく身元もないまま何とか食い繋げて気がつけば六年が経とうとしていたある日。知らない男の人に声をかけられてそのままわけもわからずある場所に連れて行かれた。
思えば、そこが奴隷売買を暗に行っていた組織だった。
名前は確か、宇宙海賊春雨と言ったか。その名前を聞いた途端に三人の顔色が変わった。
聞けば、その春雨は宇宙でも最大規模といえる犯罪組織なのだと言う。数多の犯罪に手をつけている上に、各国の上層部とも闇のパイプで繋がっているために人の力も強く、公的機関は中々対処に悩まされているらしい。
その春雨で私が遭ったことは、あまり楽しい記憶とは言えなかった。
毎朝早朝の起床を義務づけられ、一日中家事洗濯掃除に追われる日々。それだけ聞けば普通だろう。