第2章 人の顔と名前って大体一致しないことが多い
後に残ったのは沖田さんと私の二人だけ。
何か、話を切り出した方がいいのだろう。沖田さんはあいも変わらず無表情で何を考えているのかわからない。
敵じゃない事だけはわかる。
けれど、この沈黙をどうすればいいんだろう。
すると、重たい雰囲気を軽くするように沖田さんが話を持ってきてくれた。
「楓。体調はどうなんでィ?」
「あ、皆様のお陰で随分と良くなりました。ご迷惑をおかけしてしまってすみません。本当にありがとうございます」
「……本当、とんだ迷惑だ」
真剣な眼差しに射止められる。
心が、締め付けられる。
やはり、迷惑だろうか。
そりゃそうだ。いきなり誰とも知らない女が空から降ってきて、その身柄を保護せざるを得なくなったのだから。
仮に知り合いだとして、私にはその記憶がない。
ますます、自分の存在が申し訳なくなってくる。
「……ごめんなさ」
「せいぜい血がにじむまでこき使われるこった」
言い切る前に、そう言われた。
それは、ここに居ていいということだろうか。
もう、この人は。