第2章 人の顔と名前って大体一致しないことが多い
「……あ……」
「どうしたんでィ?」
言ってもいいのだろうか。こんなこと。恥ずかしい人だと、思われないだろうか。
「言いたいことがあるなら言えばいい。近藤さんと土方さんが反対してもおれが聞いてやらァ」
ああ、ずるいなぁ。
これ以上甘やかしたら、調子にのってしまう。
「……私を、ここに置いていただけませんか?……足手まといにはなりません。洗濯でも食事でも必要であればなんでもお手伝いさせていただきます」
「それはまた、何でだ?」
「……ここに、いたいんです……ご迷惑でしたらごめんなさい。でも、私でもわからないけれど……一人に、なりたくないんです……それに、もしかしたら何か思い出せるかもしれない」
純粋に、目を見て伝える。
このまま一人で生活することになることがひどく虚しいことのように思えた。叶うことなら、人がいるこの場所にいたい。
それに、この人たちと一緒にいれば失くした記憶も戻るかもしれない。
この三人と過ごした記憶、顔も知らない両親の記憶を思い出したいと強く願った。
三人は顔を見合わせながら思案する。
「つってもここは男所帯で、こんな年端もいかねぇ女を置いておくわけには……」
ああ、やっぱり。
謝罪と前言撤回の言葉を口に出そうとしたとき、沖田さんの腕に阻止された。