第1章 あの日から
「殺生丸様〜!!」
あの日の出会いから数年。
少女の名は、りん。
親兄弟を野盗に殺され、自らも狼に噛み殺されてしまったが、殺生丸の天生牙によって命を救われた。
そんな幼かったりんも、12歳になっていた。
りんの呼びかけに何も反応しない殺生丸。
これはいつものことである。
りんはそんな態度の殺生丸にお構いなしで彼に駆け寄って行った。
「見て!!綺麗な花が咲いてたのー!!」
りんはつんできた花を殺生丸に見せた。
殺生丸はゆっくりと、りんが持っている花に視線を向けた。
「ね?綺麗でしょ?」
にっこりと笑って言うりん。
殺生丸は、何も言わずりんの摘んだ花を静かに眺めた。
命を救われた日から、りんは殺生丸と邪見に付いて一緒に旅を始めた。
殺生丸もどこまでも付いてくるりんに、最初は何も考えてはいなかったが、いつしか特別な存在となっていた。