第20章 人間と妖怪の恋物語
「この着物、おかしくない?」
新しく繕った着物に着替え、手鏡で髪を整えるりんを見て葉月はくすっと微笑んだ。
「なに??やっぱり変??」
「いいえ。とてもお美しいです。りん様が殺生丸様に尽くしてらっしゃる姿は、とても尊敬します。」
葉月の言葉に、りんは頬を赤く染めた。
数時間後、殺生丸が屋敷に戻って来た。
りんは殺生丸の着物を揃えて、庭に咲く桜の花びらを浮かべた茶を出した。
「もう、桜の季節も終わりですね。」
庭の桜の木は、もうほとんど散ってしまった。
池には一面が桃色になるくらいに、花びらでいっぱいになっている。
殺生丸は、りんをそっと引き寄せた。
赤ちゃんが出来なくてもいい。
殺生丸様と、ずっとこうしていられるなら……
その晩、いつものように甘い一時が流れた後
りんの寝顔を眺めていたら殺生丸は、突然胸に強い痛みを感じた。
大怪我をしても表情一つ変えない殺生丸が、眉間に皺を寄せた。
りんを起こさないように起き上がると、庭に出た。
まるで何かに握り潰されるような強い痛みに、殺生丸は地面に膝をついた。