第20章 人間と妖怪の恋物語
屋敷の縁側に差し込む朝日
昨日まで降ってた雨が今朝はやっとあがり、
庭に咲く草花から水滴がポタポタと地面湿らせている。
りんは部屋の中から、そんな何気ない風景を心穏やかに眺めていた。
「…どうなされたのですか?」
ぼんやりと景色ばかりを眺めているりんに、葉月が茶を持って来てくれた。
「ううん。なんだか、平和だなぁって。」
殺生丸と共に旅をしていた頃、
奈良の行方を探す日々は毎日が目まぐるしく過ぎていた。
強さを求める殺生丸との旅は、人間のりんには危険なことばかりであった。
でも、殺生丸はいつも守ってくれた。
あの日々が辛かったことはもちろんない。
しかし、こんな風に流れ行く季節の変化をこんなにも安らかな気持ちで感じる事も、今のりんには幸せな事だった。
子供を流産した時はとても苦しかった。
自分自信を憎み、人間であることさえ恨めしかった。
しかし、今は違う。
殺生丸と共に生きていけることだけで、十分だった。
「そろそろ殺生丸様が御帰りになりますよ。」
「そうだね。」