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人間と妖怪の恋物語

第9章 選択の時


「……あ、散歩、する?」

沈黙に耐えきれなくなったりんが言った。



白く可愛らしい花が咲き誇る野原を、二人でゆっくり歩いた。


久しぶりに見る殺生丸に、りんは胸が熱くなった。


「…殺生丸さま。りんね、たいぶ弓が上達したよ。」

りんは立ち止まり、殺生丸を見上げて言った。

殺生丸も、りんに視線を向ける。


「もう立派な退治屋だって珊瑚さまも言ってくれたの。だからもう、心配しないで?」


殺生丸は、りんの前に膝をついて頬に手を添えた。

そんな殺生丸の行動に、りんは頬を赤く染めた。


「りん。お前をここに預けた時、いつかお前の生きる道を選ばせようと考えていた。」


りんは殺生丸の言葉に、ゴクリと喉を鳴らした。

「このまま人里で暮らすか、私と共に生きるか。」


私と共に生きる


殺生丸さまと、共に…


ずっと願ってきたこと。

一番望んでいたこと。


選ぶ道は決まっている。



「…お前のこれからは、私が決めることにした。りん、お前には…選ばせない。」



ドクン…


殺生丸の言葉に、りんは一瞬時が止まったようだった。


りんには、選ばせてくれない……?


「……ど、どうして」

やっとの思いで振り絞った声は意外にも落ち着いていた。


殺生丸は、まっすぐにりんの瞳を見た。


いや…

わたしは、


殺生丸さまと一緒にいたい!!!!


りんの瞳に涙がたまり、今にも溢れそうになった。



「りん、私と共に生きろ。」



サァァッ…


風が、花びらを宙に舞わせた。



「………え?」



りんは、殺生丸の顔を見た。


「私と共に生きることは以外、選ばせない。」


殺生丸の言葉に、りんの瞳から涙が溢れた。



「…っ…っ…せっ、しょうまる…さま…」


ポロポロと涙を流し、殺生丸の胸の中に体を預けた。

殺生丸も、優しくりんを包み込んだ。




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