第1章 あの日から
「はぁっ…はぁっ…急がねば…!」
美鈴は天生牙を抱えて城の中を走った。
スパンっ!
勢い良く襖を開ける。
御簾の向こうに、布団が一枚敷いてある。
「はぁっ…あなたっ!」
布団に横たわるのは、もう白骨化した死体だった。
骨は所々砕け、皮膚や髪の毛はもう残ってはいない。
そんな死体に、美鈴は寄り添った。
「さぁ…天生牙を奪って来ましたよ!これで、あなたが蘇るのね…!」
殺生丸は、上空の双子の目の前までやってきた。
「殺生丸様。美鈴は私達の母です。」
双子の話を黙って聞く殺生丸。
「父は、確かにあなたによって殺されました。60年前に。」
「え…60年前に??」
りんが驚きたように言う。
美鈴の外見はどう見ても20代後半。
「……殺生丸様は母がただの人間ではないことに気付いておりますね。」
殺生丸は黙っている。
「母は、身体は朽ち果てても自分の魂を私達に託したのです。身体は骨と土で出来たまがいもの…私達を殺せば、母の魂も成仏出来るはずです。」
双子は、淡々と話を続けた。
「殺生丸様…私達を救えるのはあなたの天生牙だけ
です…どうか、この世から解放させて下さい…」
殺生丸は、りんを抱えると美鈴が入って行った城へ向かった。