第1章 あの日から
「この女の心は、私の侵入によりどんどん支配され、いずれは死ぬ。」
美鈴の言葉に殺生丸は目を見開いた。
殺生丸はりんの腕を掴んだ。
ひんやりと、冷たくなっていた。
「ふふふ、さぁ後どれだけ命が持つのか。」
殺生丸は上空からの気配に気が付いて上を見た。
上空から、さっきの双子の姉妹が見下ろしていた。
殺生丸はりんから離れて、腰から天生牙を抜いた。
そして、りんに向かって投げた。
「こんなに簡単に差し出すとは」
美鈴はりんの体から抜けて、目の前に落ちている天生牙を手に取った。
「これで夫を蘇らせ、そしてお前を殺してやる!!!」
美鈴は天生牙を持つと、城の中へと入って行った。
美鈴が抜け出したりんの身体は地面に倒れた。
殺生丸はすぐにりんに駆け寄った。
「……ぅっごほっごほっ!」
りんは咳き込むと、ゆっくり目を開けた。
「りん。」
殺生丸は優しくりんの頬に触れた。
「殺生丸様……」
りんは弱々しく微笑んだ。
冷たかった体も徐々に暖かくなり、真っ青だった頬も桃色に色付いた。
りんは、殺生丸の腰に天生牙がないことに気が付いた。
「殺生丸様…天生牙は…?!」
殺生丸は何も言わず、りんを見つめた。
「お前が無事なら、あんな刀など必要ない。」
「そんな…駄目だよ!お父様の形見の刀なのに!」
「いい。」
「殺生丸様……」