第1章 あの日から
りんは邪見と、林の茂みの中から殺生丸を見守った。
「あの女〜!いったい何だと言うのだ!!!」
「あの人…夫の仇をとるって言ってたよ。殺生丸様に殺されたって……」
りんは俯いて言った。
殺生丸は大妖怪だ。
人など、今までにどれだけ殺して来たのだろう。
「何だそれは〜?!そんな人間の事など殺生丸様がいちいち覚えている訳なかろう!!」
殺生丸は、美鈴の前に来た。
指をパキパキと鳴らして美鈴を睨んだ。
「後丁寧に、あの人間を安全な場所まで連れて行くとは。」
美鈴も矢を殺生丸に向けた。
「私と夫はこの城に住み、幾つもの戦で勝利を上げてきた。あの日も、私も夫もかなりの深傷を負ったが、やっとの思いで敵からこの城を守ったと思った時に、お前は現れた。そして、私の目の前で夫を殺したのだ。」
殺生丸は、美鈴の言葉に記憶を辿った。
この城…あの時の…
珍しく、妖怪との戦いで傷を負った殺生丸。
戦いでは擦り傷ひとつ作らない殺生丸は、己の弱さに苛立ちを感じていた。
そして、その苛立ちを偶然居合わせた人間にぶつけた。
周りに立ちはだかった人間を、殺生丸は容赦なく殺した。
その中に、美鈴の夫がいた。
「お前だけは許さぬ…その天生牙をよこせ!!!」
「お前のような者に、天生牙は扱えぬ。」
殺生丸はそう一言言うと、美鈴に向かって光の鞭を放った。
「天生牙は必ず貰う!死ね!殺生丸!!!」
美鈴も殺生丸目掛けて矢を放った。