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煌めく瞬間にとらわれ

第2章 第1章 入学



「そりゃーね!あの無口で誰に向かっても威圧的な態度?あれを醸し出せるヤツはそーいないよ?尊敬に値するかもね!逆に!」

そう言いながら裕子は笑う。

「でも、あれがモテるんだもんねぇ……。わからん。」

「うん……。」

って惚れた私が言うのもなんですけどね。

楓はモテる。
中学生になった頃からスター選手だった。

去年のバレンタインは、他所の中学校からもチョコが山のように届いて、クラス中でどぅやって持って帰るか悩んだくらい。

結局、友達何人かでお値段が張りそうなのを選んで楓の手元に残して、後はクラスメイトと部活の後輩に配って持って帰ってもらった。

そもそも、楓は甘いもの食べないから、手元に残したヤツも我が家で処理した始末。

ラブレターも3年間、ほぼ毎日貰ってた。

「みんな、アイツの試合中の姿しか知らないからね。」

そう、バスケの事になると別人のように熱くなる。
私から言わせれば、ある意味病気。

ま、確かにバスケしてるときの楓が一番格好いいけどね。

「そんなのに一番縁が無さそうなのに、アイツからあんたに告ったんでしょ?」

「……うん。」

「ますます謎だ……流川楓……。」

私だって、楓の全部がわかってるわけじゃない。
大体、喋らないし、表情も読みにくい。

初めて会ったときもそうだった。

****************

「初めまして。向かいに越してきた依田と申します。この子は娘の花穂。この春から3年生です。」

「流川です。よろしくお願いしますね。花穂ちゃんは家の息子と同じ歳ね。よろしくね。」

「あら、よかったわね花穂。お友達が近くにいるわよ。」

小学校3年生になる時に、父の仕事の都合で今の家に関西から引っ越して来た。

母親同士のそんな会話の中、楓が部屋からバスケボール持って、無表情で現れた。

「あ、楓。お向かいに越してきた花穂ちゃんですって。」

楓は無言で靴紐を結んでいる。

「楓くん?よろしくね。」

私の母にそう言われて、とりあえず顔を上げて私の顔を見た。でも直ぐに、視線を落として靴紐を結んでいる。

「もう!この子ったら!ごめんなさいね、この子妙に無口で……。バスケットしか興味のない子なの。」





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