第2章 第1章 入学
「いいえ、いいんですよ。同じ歳の子が近くにいて安心しました。」
母親達は、ママトークにそのまま突入していった。
私が手持ちぶさたにしてると、楓が靴紐を結び終わり玄関から出てきた。
「楓?公園のコート?」
楓は黙って頷く。
「気を付けて行くのよ?」
また、黙って頷く。
そして、私の横に来ると、
「着いて来る?」
と無表情で言った。
「え?」
無表情過ぎて、逆に着いて行ってもいいのか不安になった。
「あら、珍しいわね。誰かを誘うだなんて。」
おばさんが目を丸くしてビックリしてる。
「良かったわね?着いて行っておいで?楓くん、帰りもお願いしていいかな?昨日来たばっかりだから、この子場所がよく分からないの。」
楓は、お母さんの目をちゃんと見て頷いた。
そして、私に向き直して
「チャリある?」
「え?うん、あるよ。」
「チャリで行く。」
そう言って、自転車のカギを外しだした。
私は、慌てて家に戻って荷ほどきしたばかりの自転車を出して、ヘルメットを被って楓に走り寄った。
楓は、私の家の前に来て待っててくれた。
そして、黙って自転車に跨がって漕ぎだした。
私は、また慌てて着いて行った。
コートに着いても会話がある訳じゃなく、私に顔が向く時は常に無表情。
私が居るのを確認するように、プレイの合間に必ず私を見る。
私は、そんな楓を黙って見てるだけだったけど、不思議と退屈じゃなかった。
と言うより、凄く楽しかった。
小学校3年生だけど、楓のプレイにすっかり捕らわれていた。
楓曰く、
「目がキラキラした、小動物みたいで面白かった。」
んだそうだ。
面白そうな顔には見えませんでしたけどね?
むしろ、まだ居るし……。って思われてるって思ってましたけど?
楓の無表情と威圧的な態度は、楓を創る上で、欠かせないアイテムの一つだったんだろうなって思う。