第3章 第2章 部活とすれ違い
私とおじさんを遮るように、男の人が私の後ろに立っていた。
「ほら、次降りるよ。」
そう言って、私の手を掴むとあっという間に降車ドアの前に、ドアが開いて手を繋いだまま電車を降りた。
「大丈夫?変なのに絡まれちゃったね。」
声のする頭上へと顔をあげると
「仙道さん!?」
「あれ?今気付いた?嶺南のおチビちゃんの方だよね?」
「あ、はい!すぃません!ありがとうございます!」
「気を付けなきゃ、あの電車、オフィス街回ってくる電車だから、今の時間位からあんなの増えるよ?」
「あ……知らなかった……今日から塾に通うことになって、この時間帯に電車乗るの初めてだったんで。」
ふと気付くと、私は仙道さんと手を繋いだままだった。
「さ、駅出ようね?」
仙道さんは、繋いだままの手を見る私に気付いてる風だったけど、お構いなしにそのまま改札へと階段を上がり始めた。
「仙道さん!?」
楓と変わらない身長なのに、歩幅はこっちに合わせてくれてる。
楓はお構いなしに歩く。だから私は楓と階段登るときはだいたい早足。もしくは走ってる。
優しいな……この人……
思わず、仙道さんを見上げる。
それに気づいたのか、仙道さんは私を見てニッコリ笑った。
(楓にこの人の爪の垢を煎じて飲ませたい‼)
と本気で思った。
改札に着いて、定期券を出すのに手を離してもらったら
「あら、残念」
と、仙道さんはまた笑った。
改札を仙道さんと並んで出ると、楓が不機嫌そうに自転車にまたがってこっちを睨んでた。
「……っ!楓っっ!」
「遅い」
「遅いって……遅くなるって言ったじゃん。」
「……遅い」
なんて、やり取りをしてると
「じゃーねーより♥️」
と仙道さんが、私の頭をポンと撫でるように叩いて行った。
「あ……、ありがとうございました!!」
私は、仙道さんの背中に向かって声をかけた。
仙道さんは、背中を向けたままヒラヒラと右手を振って答えて去っていった。
「……帰るぞ」
背中で、そう楓の声がしたから振り返ると、楓は既に自転車をこいで自分だけさっさと帰って行った。
「……え?……ちょっと!楓っっ!」
いつもは、何だかんだ言って(言わないけど)待っててくれるのに、さっさと一人自転車で帰って行く。
しかも、何気に速度が速い。