第3章 第2章 部活とすれ違い
「あっ!でもでも!こいつのカレシはバスケやってますよ!」
「へー?上手い?」
「えぇ!まぁ、仙道さんの足元には及びませんけどね、そこそこ有名人ですよ?」
「マジで?楽しみだねー。おチビちゃん、カレシはどこの高校?」
「……あ……えと……しょ……湘北です!」
湘北の名前を聞いて、仙道さんが少し驚いた表情をした。
そのあとすぐに、不敵な笑みを浮かべて
「流川楓?」
と楽しそうに楓の名前を口にした。
「え……そぅです……。」
「やっぱりあんたのダンナ有名人だねぇ!仙道さんがフルネームで名前知ってんだから‼」
裕子は我が事のように満足そうだ。
「ウチの監督が、直談判に行ったくらいだからねぇ。にべもなく断られたらしいけどね。」
その時の田岡監督の事を思い出しているのか、そう言って楽しそうに肩を揺らしながら笑った。
「あ!いたいた!仙道さ~ん‼こんなとこにいはったんですか!?探しましたでぇ!」
「あ、彦一。」
「彦一ちゃいますがな~。先輩方にめっちゃどやされたんですよ?堪忍してくださいよ~。って、何ですか!?女の子と仲良ぅ喋って‼ほら!皆さん待ってはりますよ!」
彦一と呼ばれた裕子より小さい男の子は、仙道さんの腕を引っ張ってベンチから立たせようとしていた。
「わーかったから!引っ張んなって!」
「待ち合わせ場所は5番ホーム!ここは3番ホーム!人の話ちゃんと聞いたって下さいよ!」
慌てる彦一くんを尻目に、ゆっくり立ち上がった仙道さんは私たちに目を向け
「頑張ってね。湘北ともそのうち試合するだろうから、観においでよ。歓迎するよ。」
と、笑顔を見せて去っていった。
私達にヒラヒラと手を振る仙道さんと、ペコペコ頭を下げながら仙道さんの腰辺りを押して階段を上る彦一くんを私と裕子は黙って見送った。
「いい人だね~仙道さん。さすが、未来の全日本候補!器が違う!」
周りの刺すような視線に平然とする裕子が羨ましくてたまらない……
そのあと、言うまでもなく1日中私は針の筵に座らされてる気分だった。
裕子は
「自分で話しかける勇気がないヤツに、何で色々気ぃ使わなきゃいけないのよ?私達が話しかけたのが羨ましいなら、自分もやれば?って感じ!」
と、怒ってた。