第3章 第2章 部活とすれ違い
「……またニヤニヤしてるよ、コイツ……」
裕子の呆れた声に、現実に引き戻された。
「あっ!えっ!?……えへへへ~。」
さすがの裕子も楓の笑った顔は知らないはず!
だって!裕子があんな事言い出すから思い出しちゃったんでしょ!?ニヤニヤするよ!
……なんて事言った日には、あの時の事を根掘り葉掘り聞かれるから、頑張って呑み込んだ。
大事な思い出として、心に仕舞っておくんだ🎵(笑)
「あれ?今日はここにいる。」
裕子の声に顔を上げると、ホームのベンチに座ったツンツン頭が目に入った。
「あ……仙道さんだ。」
「おーおー。女子が遠巻きに見てるよ~。話しかけちゃえばいいのにね。」
裕子の顔が意地悪になってる。
「花穂行ってみる?」
「へ?」
にやーっと笑った裕子の言葉に悪寒が走った瞬間、175㌢の裕子に引っ張られた私は、気づいたら仙道さんの前に立ってた。
周りがざわついたのを感じた。
「仙道さんのプレイ、カッコよくて、試合が被った時は見てました!真似はできませんけど、参考にはさせてもらってます!握手してください‼」
怒号と悲鳴が入り交じったどよめきが起こった。
冷や汗が背中を伝って行った。
「はいはい、ありがとーねー。」
仙道さんは、そんな周りに気づくことなく、何の気無しに裕子と握手と交わす。
「嶺南のバスケ部?神奈川トップじゃん。そっちのおチビちゃんもかな?」
「あ、この子は違うんですよ。中学3年頑張ったんですけどね。海外コースに進学しちゃったんで。」
「へー頭良いねー。」
裕子は普通に仙道さんと会話をし始めた。
周りの空気が痛くて仕方ないのは私だけらしい……。