第3章 第2章 部活とすれ違い
人を、連れ出すんだからだいたいそんなとこかな?って思いながら話を振ってみた。
「……上手く言えねえかもしれないけど……聞いてて。」
「……うん……。」
楓は、私の方を身体ごと向いて座り直した。
「俺、お前は黙っててもずーっとニコニコ笑って、俺の後ろに居るもんだと思ってた。」
楓は、ポツポツと一言一言を選びながら話をし始めた。
「だから、俺が湘北に行くから、お前も湘北に来ると思ってた。」
「あー……ご期待に添えずにすいません……。」
すると、楓は私を突然抱え上げ、柵の上に座らせた。
「ちょっと!怖い!」
「支えてる。」
身体はさっきの自転車みたいに密着して、更に楓の手が私の腰に回って身体を支えてくれている。
(また心臓の音が凄いんだけど‼)
思わず、楓の顔に目をやると、楓も私の方をじっと見てるのに気づいた。
「楓?」
「俺……お前の事を離したくないんだと思う。いつも、側に置いておきたいんだって。」
もー、心臓が動きすぎて、何も言葉が出て来なかった。
「でも、花穂がやりたいことを辞めさせるつもりもない。」
そう言って、ふわっと私を抱き締めた。
「俺の彼女になって。」
楓の事を好きなんだって気づいたのが、中1の中総体だったから、2年半待ち望んでた言葉が耳に入ってきた。
「嶺南に行くのも文句言わない。……不満だけど。」
嬉しすぎて、視界が滲む。
思わず楓の制服のシャツを、両手で握りしめていた。
「花穂……その……小さくて……か……可愛いから……。誰かに持って行かれそうで嫌だ。」
「俺の……物にして良い……?」
私は相変わらず、言葉が出なくて、泣きながら小刻みに首を縦に振るしか出来なかった。
「花穂……。」
いつもの何倍も優しく私の名前を呼ぶ声に、思わず顔を上げたら……
……楓が私を愛しそうに見て、笑ってた……
「好きだ……。」
楓はそう言って、優しくキスしてくれた。