第6章 頭首
結紀自身では平和的に済めばいいんだけど、とは思っているが世の中はそうはいけないのだった。その時だった。重い空気を感じた結紀はハッとその方向を見る。見た感じでは誰もいないが…。その様子から昴輝と彰も真剣な瞳になり、その方向を見ては結紀に尋ねる。
「…何かいるのか?」
「…侵入者だよ。恐らく、これは…死神。」
「僕が足止めしておくよ。後から援軍をお願い。」
彰はそれだけを言って先に行ってしまった。結紀は彰と共に行動を移したかったがそうもいかない。何しろ今回は鳥族がいるのだから、むやみに行動はできない。
昴輝は周りを見てさらに気配も確認してから結紀の前に跪き静かに言った。
「…吸血鬼族の頭首よ、どうか俺にご命令を…。」
昴輝がこのような態度を取るのは、結紀が頭首だと認めているからだ。昴輝の態度に結紀は驚きの表情を見せるがやがてその目付きは頭首らしいものを表した。
「昴輝。鳥族と共に死神を討つ。指揮は昴輝に任せる。必ず、生き残れ。」
「御意。吸血鬼の名に掛けて…必ずや。」
昴輝の言葉を聞いた結紀は僅かに口元をつり上げていた。やがて、結紀と昴輝が行動に移る。まずは、一旦、会議室に戻らなければならない。あまり時間を掛けられない。彰は実力者とはいえ、死神の人数にもよる。
会議室に戻ってみれば、まだそこには鳥族がいた。そして、指揮を任された昴輝は鳥族に言った。