第10章 魂の行方
事を済ませた結紀が戻ってくれば、心配したとばかりに昴輝が彼女を強く抱きしめ始めた。予想通りだと思った結紀は、彼を優しく包み込むように抱きしめる。
結紀が、どうしたの?とばかりに彼の頭を優しく撫でていれば、彼はなんでもない、とばかりに自分の額を結紀に押し付ける。
すると、何かを感じた昴輝の動きが止まり顔を上げて彼女に言った。
「違う匂いがする。誰かいたのか?」
「……まぁね」
誤魔化して言っている彼女に昴輝の表情はどこか険しかった。それに気づいている結紀は、クスと笑っては彼の頬を優しく撫でる。
彼女の手の温もりを感じた昴輝は、先程の険しい表情は消え瞳には、不安と優しさを写していた。彼の瞳を見てしまった結紀は、じっと見つめてしまう。
――あぁ、ズルい……。キスしたくなる……
そんな欲望が昴輝の心の中で膨れ上がってくる。まだ、彼女に思いを告げてもいないのに、少しずつ昴輝は彼女との距離を縮めていく。
その時だった。
「何をしている」
突然と声が聞こえてきた。ハッと我に返った昴輝は、慌てて彼女から離れ声が聞こえてきた方向へと見る。そこにいたのは、緑間と高尾の姿があった。
先程の行動を見られた、とばかりに昴輝は僅かに頬を赤く染めては、殺意を緑間に向けていた。
「何をそんなに怒っているのだよ」
状況を理解していない緑間は、呆れた表情を浮かべながら昴輝に問いかけていた。だが、逆に状況を察した高尾が腹を抱えてブッハッ!と笑い始めていた。