第5章 同盟
倒れて、そのまま殺されていれば全てが終わりだからだ。偵察の役割は、族にとってとても重要なものだからだ。どっちにしろ、青峰や火神は黒子を殺そうとは思ってはいないらしい。
「なぁ、黒子。その偵察の内容を聞いてもいいか?」
「あ、はい、別に構いません。僕は、吸血鬼族にいるフードを常に被っている人物の偵察するという目的です。」
フードを被った人物、という言葉に火神と青峰はお互いの顔を見る。そう、黒子はフードを被った人物…結紀の偵察の目的だった。すると、青峰は僅かばかり口元をつり上げて、黒子に言う。
「テツ、オレもその偵察の協力するからよ。そいつと戦わせろよ。」
青峰の提案に、火神と黒子は驚きの表情を見せる。違う族同士で一緒に戦うというのは、同盟を組むということになる。黒子は、視線を地面に向け考え始める。本来ならお互いの頭首同士で話し合って、協力していくのだが、これは個人での同盟だ。
他の人達に見つかってしまえば、大きな問題へとなってしまうリスクが出る。やがて、黒子が青峰の方を見て言った。
「分かりました。やりましょう、青峰君。」
「おう!」
「お、おい、マジかよ!?」
「火神はどうすんだよ?」
青峰は火神に問い掛ける。火神自身は、未だ信じられない…という思いをしながら、眉間に皺を寄せて難しそうな表情を見せる。だが、答えはすぐに出た。
「分かった、オレも行く。」
「んじゃ、決まりだな…。」
火神、青峰、黒子の3人で個人の同盟を結び、結紀の正体を知ろうと決めた。3人の話し合いで、決行は明日となった。その話し合いを、全く知らない結紀だった。