第5章 同盟
青峰の口から出た人物名を聞いた火神は驚きながらも、青峰に聞く。
「青峰、コイツと知り合いなのか…?」
「まぁ…な…。」
青峰はそれだけを言っては口を紡ぐ。火神は、溜息を1つして村に戻ると混乱が起きる為、近くの川まで黒子を背負って移動をする。
川を見ればとても綺麗だった。この川は狼族がよく利用する川である。その川の水で黒子に与える。水を飲んで、黒子は火神と青峰にお礼を言う。
「ありがとうございました。とても助かりました。」
ぺこり、と頭を下げる黒子。礼儀の正しさに火神は少しだけ戸惑う。無理もない。相手は、狸族な為、敵同士。本来なら、戦闘が始まってもおかしくはない。
火神自身でも、何故、黒子を助けてしまったのか不思議で仕方なかった。やがて、黒子は青峰の方を見て言った。
「お久しぶりです、青峰君。」
「あぁ…そうだな、テツ…。」
「そういや、お前と青峰は知り合いなのか?」
「はい、そうです。あ、僕は黒子テツヤです。」
火神の質問に答える黒子。ついでなのか、黒子は火神に自己紹介をする。自己紹介をしてきた黒子に、驚きを隠せない火神だったが、火神も黒子に自己紹介をする。
「黒子だな。オレは、火神大我。宜しく!」
「はい、火神君。よろしくお願いします。」
そして、お互いに握手をする。その様子を黙って見ていた青峰は、口を開き黒子に質問をする。
「それより、テツ…。お前が狼族の領土に倒れてたんだ?」
「あ、僕は…吸血鬼族の領土に入って、偵察しに行こうとしてたんです。その途中で力を尽きてしまって…。」
黒子の一言に、青峰と火神はどこか呆れた表情をしていた。偵察しに行く人が倒れていては、偵察どころではない。