第5章 同盟
高尾からお礼の言葉を聞いたのは、治療を受けてからすぐだ。またまた、こうして、改めてお礼をしに来るというのは結紀は今までなかった為、どう反応していいのか分からなかったからだ。
「え、あぁ…。分かったから去れ…。頭首に見つかってしまっては、殺されるぞ…。」
そう結紀が言った通り、ここに昴輝がいたらすぐに攻撃を仕掛けてくる。その警告をする。その事に、緑間と高尾はお互いの顔を見て、帰ることを決めた。羽を羽ばたかせ、宙に浮く。その時、高尾は結紀に…。
「また、来るぜ!じゃーな!」
明るい声でそんな事を言った。その事に、緑間は今まで以上の驚きの表情を見せ、結紀の動きが止まってしまう。高尾は、返事を聞く前にその場から緑間と共に離れていった。
「…馬鹿なの…?」
結紀がやっとの思いで口にしたのがこの一言だったのだ。
狼族の領土をのんびり歩いている、火神と青峰。この2人にとって、久しぶりの休日というのだ。毎度の事、戦闘に出ていた為、たまには休憩が必要だ。そんな中、平地を歩いていると2人の目の前で、人が倒れていた。
火神と青峰は、警戒しながらも倒れている人物に近付き、恐る恐る声を掛ける火神。
「お、おい…アンタ、大丈夫か?」
火神の声で、僅かばかり顔を上げてその人物は火神に向かって言った。
「あ…あの…水…を、僕に、下さい…。」
その人物の声はとても弱々しかった。今でも死んでしまいそうな雰囲気である。だが、その人物を見た青峰は、どこか険しそうな表情を浮かべて言った。
「…お前…テツ…。」
倒れていた人物は黒子だった。