第3章 血祭りの真似事
黄瀬の様子から咄嗟に結紀は、左足に力を入れてジャンプで攻撃を避け木の上へと移動する。木の上へと移動した結紀の様子を窺う黄瀬。
「ズルいっスね。だけど…。」
黄瀬が呟くように言っては、木の方へ登って来るかと思っていた結紀だったのだが、それを裏切り黄瀬は結紀が登っていた木を尻尾の力で倒してしまう。
流石の結紀でも驚いた為、違う木の場所へと移動をする。黄瀬が倒した木はドーンッ!という大きな音を立てる。黄瀬は倒れた木を見ては、やり過ぎたっスね…と僅かに声を出していた。
その木の音を聞いた氷室は、昴輝との戦闘を中断させ黄瀬の方を見る。黄瀬が木を倒した事によって氷室は僅かに困惑した表情を見せていた。
「黄瀬君…何をしてるんだい?」
「木を倒した…だけっスよ?」
「…馬鹿な狐だな。」
「ば、馬鹿とは…なんスか!!」
思わず氷室は、黄瀬に話しかけてしまった。黄瀬は、キョトンとしながら氷室の質問を答える。しかし、いくら敵とはいえ、昴輝でも呆れた表情をしながらそんな事を黄瀬に言ってしまった。
この様子から楽しそう…いや面白そうにクスクスと笑っている結紀は、黄瀬に向かって言う。
「…礼を言うよ、黄瀬とやら。」
「は?どういうことっスか!?」
「…仲間を呼ぶ時間が省けた。」
そう結紀は隙を見て吸血鬼達に連絡を入れようとしていた。しかし、黄瀬が木を倒して大きな音を立てた為、仲間が自然と集まって来る。それに気づかずに黄瀬は、木をなぎ払ってしまったのだ。
「頭首ッ!!」
一番、先に現場入りしたのは彰だ。