第3章 血祭りの真似事
結紀は、それだけを吐き捨てて黄瀬に向かって襲い掛かった。爪を長くさせ、再び斬り裂こうとした。その時、黄瀬は、僅かに口元をつり上げる。
その事に気が付いた結紀は、僅かに不可思議に思ってしまった。黄瀬は、一旦、目を瞑ったと思ったらすぐに目を開けて、向かってきた結紀を斬り裂こうとした。
その行動は、流石の結紀でも驚いた。咄嗟の判断で、結紀は黄瀬から離れる事にした。その時、ビリッ!と嫌な音が聞こえてきた。
コートの一部が破けたのだ。黄瀬が斬り裂いた結果なのだろう。仮に、このまま結紀が黄瀬に突っ込んでいたら、顔を見られたのに違いない。黄瀬は、どこか悔しそうな表情をしていた。
「あ~もう…ホント惜しいっスね…。」
「…我(わたし)の【模倣(コピー)】を…。」
「ちょっと、まだ、やりにくいっスけど…もう少し時間経てば、完成っスね…。」
「厄介な…狐だ。」
「褒め言葉として受け取っておくっスよ。」
黄瀬が、ニヤリと僅かに口元をつり上げて言った時に、結紀は、あっ…と僅かに声を出した。まるで、何か思い出したような感じでいた。それが、不思議に思った黄瀬は、首を傾げる。
「狐じゃなくて、"ただ"の犬か。」
「ひどっ!?それに、"ただ"の犬ってなんスか!!」
結紀の言葉が余程酷かったのか、黄瀬はダバーっという程に大量の涙を流す。その黄瀬の様子から気が抜けてしまいそうになる。しかし、油断はできない状況である。
「地味に傷つくんスよ…?」
「…どうでもいい。」
黄瀬は、大量に流した涙を袖で拭き取ったと思ったら、右足と尻尾の力で地面を蹴り結紀との距離を縮める。