第3章 血祭りの真似事
それを見た黄瀬は、どこか残念そうな表情をしていた。結紀の心の中では、どこか焦っていたが、それを落ち着かせるために、静かに息を吐く。爪を鋭くさせ、黄瀬を斬り裂こうという態勢になる結紀。
「アンタも随分、おっかないっスね。殺気が凄いっスよ。」
「…この領域から出てもらう。去れ。」
「そう簡単に、帰るわけにはいかないっスよ!!」
黄瀬は、右足に力を入れて結紀に襲い掛かる。その動きを読んだ結紀は、左足に力を入れて高くジャンプをする。そのまま、黄瀬の背後にまわる。
結紀は、右手を挙げてそのまま黄瀬を斬り裂こうとした。だが、すぐに黄瀬の尻尾が結紀に襲い掛かり、結紀を吹き飛ばしてしまった。
「あ、がっ…。」
ドーン!と大きな音を立てて、砂煙が立つ。黄瀬の表情は、どこか余裕そうに見えてしまった。だが、すぐに立ち上がり結紀は地面を思いっきり蹴り、黄瀬との距離を縮める。
結紀がすぐに行動をしたことに驚きの表情を隠せない黄瀬。その隙に、結紀は黄瀬を蹴り飛ばす。黄瀬も結紀と同様に吹き飛んでしまった。黄瀬は、いてて…と僅かに声を出して、ヨロヨロと立ち上がる。
だが、結紀は平然と立っている。痛がっている素振りなどは一切見せない。それを思っていた黄瀬がいた。
「…アンタ、まさかと思うっスけど…痛みを感じないのか?」
「…だとしたら、どうする?」
「……随分と便利な体っスね…。他の吸血鬼達は、痛みを感じているみたいっスけど…。」
「…貴方には、関係ないことだ。」