第3章 血祭りの真似事
結紀が、そんな風に暴言を吐けば動き始めようと右足に力を入れて、地面を蹴る。その時だった。
「アンタの相手は、オレっスよ?」
「っ!!」
結紀の背後から黄瀬の声が聞こえてきた。そう、結紀が動くと同時に黄瀬も動いていたのだ。その声を聞いた結紀は、慌てて黄瀬から距離を取る。
結紀は、黄瀬の行動にいつの間に?という疑問だらけだった。黄瀬が気配を消すのが上手いのか、それとも結紀が感情になり過ぎて、読み遅れたのかが分らない。
「惜しいな~…。あとちょっとで、アンタの顔を見られたのにな~…。」
「お前…絶対に許さんッ!」
「あれ~?なんで、頭首がそんなに殺気だってるわけっスか?」
黄瀬の言葉に先程と比べものにならないぐらいに、昴輝から殺気を感じる。氷室は、僅かに口元をつり上げる。黄瀬の言葉は、あまりにも挑発的なものだ。
「…その様子だとよほど、顔を見られたくはないらしいね。」
「黙れッ!!」
この一言に昴輝の反撃が始まる。昴輝の右腕は、氷室の体を貫こうとした。その動きを読んでいた氷室は、昴輝の攻撃をかわし、右脚で昴輝を吹き飛ばす。
「ぐっはぁ!?」
「頭首!?今、行き――――」
「おっと…だから、アンタの相手はオレっスよ。行かせねぇ…。」
昴輝が吹き飛ばされ、結紀が助けに向かおうとした時、真横には黄瀬の姿があった。完全に、気を取られた結紀は驚くばかりだ。
黄瀬の尻尾が、結紀に襲い掛かる。ギリギリの範囲で結紀はかわす。