第3章 血祭りの真似事
そう、この狐族は、黄瀬 涼太だった。黄瀬は、結紀を睨み付けるように見る。
「狐族…よくここまで入れたらな…。」
「あんなの簡単っスよ。だって、化ければいいんスから…。」
昴輝が、右足に力を入れて黄瀬との距離を一気に縮め、右手で黄瀬の体を貫こうとする。黄瀬は、体を捻り昴輝から離れる。
「危ないっスね。いきなりなんスか〜。」
「侵入してきたからには、狩る!」
「流石に2対1じゃあ…キツいっスね…。」
黄瀬がそんな事を言っているが実際のところ、どこか余裕そうにも見えてしまった。黄瀬も構えるが、構え方がどうも誰かに似ていた。
「その構え方…昴輝に似ている…。いや、同じ…。」
結紀がそんな風に呟いていた。そう、黄瀬の構え方は先程、昴輝が構えたのと全く同じだった。とくに驚いていたのは昴輝だった。
「あ、オレ…【模倣(コピー)】が得意なんスよ。相手のパターンを自分のモノにするんスよね。」
「……気持ち悪いな…。」
「ひどっ!?」
昴輝の素直な気持ちを黄瀬に伝えては、狐の耳がタラーンと垂れ下がり、何故か涙を流す。その姿は、狐というよりは犬と言って正しいかもしれない。
結紀は、左脚に力を入れて地面を蹴り黄瀬との距離を一気に縮め手先を鋭くさせ黄瀬を貫こうとする。黄瀬は、結紀の攻撃を簡単にかわし、逆に結紀を貫こうとする。
しかし、いつも昴輝の傍にいる結紀は、その攻撃パターンは分かっていた。だから、黄瀬からすぐに距離を離す。
その時、近くからカサッ…と草を踏む音が聞こえてきた。