第3章 血祭りの真似事
フードが被っており顔が見えなかったことも早川は霧渓に伝える。
「…オレ達と戦ったやつじゃねぇか…。」
青峰がそんなことを言い出した。確かに、早川が遭遇したのも結紀で、戦闘を起こしたのも結紀だった。だが、青峰達には分からないだろう。
「随分と妙じゃないか?」
葉山がそんなことを言うと、それを同意するように霧渓はコクリと頷いた。霧渓は、調査が必要だな…と呟くように言っては、解散してしまった。
月がキラキラと怪しげに光っていたのだった。
翌朝になり、朝から結紀は大きな木の枝に座りある方向をずっと見つめていた。それを気になった彰が結紀に声を掛ける。
「結紀、どうしたの?ずっと、狐族の方向を見ていたけど…。」
そう、結紀はずっと狐族が住んでいる方向を見つめていたのだ。
「……いや、真似事が上手だから早めに潰しておかないとやっかいだな、って思ったの。」
「それを言うなら狸族だってそうだ…。アイツらは、狐族と違って知識も使う。」
狐族と狸族は、似たような能力を持っている。この2つの族は、主に相手の姿になれるということを持っている為、よく混乱が起きやすい。
そんな事を考えていたら、僅かにだが、結紀の心臓がドクンッ…と跳ね上がる。立ち上がり、吸血鬼の領土を見回す。
その事に不思議に思った昴輝は首を傾げて結紀に質問をする。
「どうした、…結紀?」
「……気のせいかな………。」
結紀は、呟くように言った。その時だった。吸血鬼の領土から、ぎゃぁぁぁ!という悲鳴が2人の耳に入ってきた。