第10章 魂の行方
紫原は、それだけを言ってその場から消え去った。紫原の気配が完全に消えてから、結紀は空を見上げる。その瞳は、どこか寂しそうに写していた。
「ねぇ……居るんでしょ?そこに」
結紀は、空を見上げたまま何処かに声を掛けていた。彼女の言葉を聞いて、木の陰から顔を覗かせる自分物が現れた。そこにいたのは……。
「……狐族の頭首が何の用?」
「気付いていたのか……」
そう、木の陰から現れたのは狐族の頭首である笠松が出てきたのだ。まさか、バレていると思ってもいなかった笠松だったので、最初は驚きの表情を浮かべていた。
だが、すぐに表情を戻す。笠松は、結紀に質問をする。
「さっきの話、聞いた。お前が言っていた忘れられた種族って……"鬼族"か?」
笠松の言葉を聞いて、結紀はクスと僅かに笑っていた。彼の言葉を肯定するように、一度小さく頷いた。
吸血鬼族の領域から帰ってきた紫原は、早速、赤司がいる部屋へと向かった。部屋には、赤司、虹村、白銀の3人が何やら話していた。
彼が返ってきたことに、赤司が微笑みながら言った。
「おかえり、紫原。谷矢の事は何か分かったのか?」
彼の言葉を聞いて、紫原は首を左右に振り言った。
「全然~。それよりも赤ちんさ~、忘れられた種族ってなに?」
突然の言葉に、衝撃を受けたのか赤司と白銀が目を見開き驚きの表情を浮かべていた。何も言ってこない赤司に、赤ち~ん?と聞いてしまう紫原。
紫原の声が聞こえたようで、赤司はあぁ、すまない……と小さな声で謝罪をした。
「おい、紫原。どうして、それを知ってやがる?」
白銀が逆に紫原に質問をしてしまう。