第10章 魂の行方
「……出てこい、死神」
結紀の低い声が響く。すると、木の陰から姿を現した。
「な~んだ。バレちゃったし~」
そこに居たのは、紫原であった。どこか、めんどくさそうな表情を浮かべていた。しかし、彼から殺気を感じる事はなかった。どうやら、争う気はないようだ。
それを分かった結紀は、警戒心を解くことを止めないが瞳孔を元に戻す。そして、紫原に問いかけた。
「死神族が何故、吸血鬼族の領域に?偵察?」
「ちが~うし~。調べに来たの~」
結紀の問いかけに、答えていく紫原。彼があまりにも素直に教えてくれることに僅かに驚く結紀。何を?と更に、結紀は彼に質問をする。
「……谷ちんの魂」
一瞬だけ紫原の瞳は悲しみを落としていた。死神である彼が谷矢の魂の事で此処に来ているということは、少なからず魂の回収が出来ていないということだ。
「……そうか」
結紀は呟くように言っては、紫原から視線を逸らす。その時、紫原からねぇ~、と声を掛けられる。振り向けば、彼は真剣な瞳で言った。
「魂が回収されてもないのに、なんでないの?アンタなら知ってるんじゃないの~?」
「……何故、そう思うの?」
彼からの質問、正直驚いていた結紀であったがすぐに表情を戻して逆に質問を返してしまう。紫原は、のんびりとした口調で、なんとなく~と答えていた。
思わず結紀は、はぁ~……と溜息を零していた。
――直感は、怖いな……。
内心、凄く焦りと驚きで一杯であったのだ。結紀は、近くの木に近寄りその場に座り込む。
「……貴方は」