第10章 魂の行方
狼族と狸族の襲撃から3週間が経った。その間は、至って平和であった。結紀は、再び何かしら襲撃はあるだろうと思っていたが、そんな事はなかった。
空を見上げれば、雲が一つもない良い天気であった。結紀は自分の部屋から出れば、壁に寄り掛かっている昴輝の姿があった。
「……何処に行くんだ?」
不思議に思ったのか昴輝は彼女に質問をする。結紀は、あ~……と僅かに声を出して彼の質問に答えた。
「ちょっと、調べたい場所に行ってくる」
彼女の言葉を聞いた昴輝は、目を見開き驚きの表情を浮かべていた。だが、すぐに表情を戻して、俺も行く、と静かに言い出せば結紀は、首を左右に振る。
まさか、彼女に拒否られると思ってもいなかった昴輝は、驚きの表情を浮かべて、何故!?と強く問い詰めていた。結紀は、彼の予想通りの反応に、クスと僅かに笑う。
何も言わない結紀に、昴輝は、はぁ~……と深い溜息を吐き出して言った。
「分かった。だが、何かあったら俺を呼べよ」
「……うん」
結紀から返事を聞いた昴輝は、彼女に背を向けてその場から離れて行った。結紀は、彼の背中を見送ってから、ある場所へと向かうのであった。
結紀が向かった場所は、鳳凰族である谷矢と以前、戦った場所であった。戦ったときの痕跡は残っていない。それだけ、時間が経っているという事だ。
地面を見れば、かなりの草が生い茂ていた。その時、重めの気配に察知した結紀。彼女は、瞳孔を細め気配がする方向へと見た。