第9章 記録と繁栄
その間にも、緑間と青峰がお互いを睨み合いながら戦っている。よく見れば、火神と戦っているのは高尾だった。何を思ったのか、霧渓はニヤリと口元をつり上げて言った。
「撤退するぞ。」
その一言に、はぁ!?と声を張り上げる青峰と火神。納得しないのは当然なのだろう。何せこれから盛り上がる、という場面で退くとはあまりにも酷い話なのだ。
「「なんでだよ!?」」
案の定、2人の言葉が重なる。予想通りだったので霧渓は表情を変えずに静かに言った。
「帰らないというのなら、お前らの飯抜きにする。」
霧渓の言葉に、青峰と火神の表情が徐々に真っ青になっていく。勿論、近くで聞いてた鳥族全員が、目を丸くさせて飯?と口に出していた。
普段からよく食べる2人なので、ご飯を抜かれるのはかなりの致命的なのだ。青峰と火神は、チッと舌打ちをしてその場から離れようと動き始めた。
「逃がすと思うか!」
緑真が3本の矢を青峰に向かって放つ。だが、速さが上の青峰なのでいとも簡単に避けてしまう。
「次の時に、決着を着けてやる!」
青峰が吐き捨てるように言っては、3人がその場から離れて行った。
内容を全て聞いた結紀は、そうか……と呟いていた。本来の目的は、鳥族の攻撃だったのかもしれないと考えていた。何よりも驚いたのが、青峰と火神のジャンプ力とスピードだった。
不意に思ったのか、結紀は日向にある事を質問をする。
「狼族の頭首は見たことある?」
彼女の一言に、日向と伊月はお互いの顔を見ては首を左右に振った。
「わりぃが、聞いたことも見たこともない。」
「日向と同じで、オレもないな……。」