第9章 記録と繁栄
今まで感じたことのない、殺気が今吉達を襲う。それは、昴輝も感じていた。目を見開き、結紀を見てしまう。
彼女に一番近い黒子が、何かに気付き始めた。しかし、気付いた時には遅かった。彼自身が気付いた時は、彼女から強制的に離れてしまった。
背中には、鋭い痛みが走る。強い力で吹き飛ばされたに違いない。黒子は、顔を歪めながらも結紀を見る。
「……えっ?」
思わず黒子が驚きの声をあげる。黒子だけじゃない。彼女を見た皆が驚きの表情を浮かべていたのだ。その理由は、結紀の背中から黒い右翼が生えていたのだ。
「……結紀、お前……。」
昴輝すら、やっとの思いで口に出す。結紀は、金色に輝く瞳で黛を睨み付ける。ゾクリと寒気が走る。気を抜けば、足が震えてしまう。黛の生命危機に勘づいた今吉が荒々しい声で言った。
「黛!ソイツから離れるんや!」
「……っ!!」
今吉の声で、黛は急いで昴輝から離れる。だが、一歩遅かったのか黛の右肩から強烈な痛みが走る。痛みに堪えながら、目線を昴輝に写す。昴輝を守るように前に立つ結紀の姿があった。
彼女の右手には血が付いていた。どうやら、あの血は黛のようだ。彼女中心から流れる冷たい空気。下手に動けば、殺されるに違いない。
一瞬でも目を逸らせられない。だが、それは今吉にとって都合が良かった。影が薄い黒子が動きやすくなるのだ。
自分に集中すればするほど、黒子の気配が薄れ見えなくなる。だから、僅かに今吉の口元がつり上がる。
「我に、同じ技が通用すると思うのか?」
結紀の冷たい声が今吉の耳にはいる。