第9章 記録と繁栄
ずっと観察をしてくる今吉に対して、そろそろ限界を迎えようとしていた。
「我をどうするつもり?」
「……キミ、案外可愛えぇなぁ〜。」
「……は?」
今吉からとんでもない言葉を聞いた結紀は拍子抜けな声を出してしまった。今吉の言葉をしっかり聞いていた昴輝は、抵抗していた力が止まってしまうほどだ。
勿論のこと、黒子や黛も呆れた表情をしていた。この2人は普段から表情をとくに変えることは全くなかったのだが、今回そうはいかなかった。
「何言ってるんだ……お前……。」
黛の呆れた声が聞こえてくる。だが、今吉の目線は結紀からけして離さなかった。
「なぁ、ワシのお嫁さんにならへん?」
「はぁぁー?!」
突然、今吉からのプロポーズ。結紀の驚いた声が響き渡る。勿論のこと、プロポーズの言葉は昴輝の耳にも入ってきた。
昴輝の表情は、ますます険しくなっていった。だからなのか、先程よりも抵抗する力が強くなる。その力強さで黛は僅かに驚きの表情を見せる。
プロポーズの言葉を受けた結紀は、警戒心を剥き出し、瞳孔が細くなり金色の瞳で今吉を睨み付ける。彼女の瞳を見た今吉は、口元をつり上げ彼女から少し距離をおく。
「こりゃあ〜、たまげたわ〜。自分、吸血鬼族なんやな〜。」
「五月蝿い、黙れ。狸族の頭首っ!その首、落とす!」
結紀がいくら拘束されてるとはいえ、いつ暴れてもおかしくないのだ。すぐにでも、鳥族たちに連絡を取りたいところだが、それすら難しい状況になっている。
「あ〜……。鳥族たちを呼ぼうなんて無理やで。」