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血の争い【黒子のバスケ】

第9章 記録と繁栄


しかし、結紀の手は男性の腕をすり抜ける。すり抜けたこと自体に、結紀は驚きを隠せない。その時、結紀の脳裏に昴輝の言葉が浮かんだ。

「『まず、人間から吸血鬼に変えなきゃならない。それには、吸血鬼の大量の血を飲まないといけないが……吸血鬼の力が強力すぎて、耐えることができずに死んで逝った。』」

そう結紀の目の前で起きていることだ。だが、それで確信に変わる。この目の前で起きているのは、紛れもない過去の出来事。

未来は変えられても過去は変えられない。今の結紀は無力だ。吸血鬼族の血を飲んだ人間族の女性は、苦しげの声を出す。

「……がぁ、っあ………。」

人間の女性は、床に倒れる。やがて、女性は動かなくなった。要は"失敗"だ。また、目の前に真っ暗になる。そして、結紀の足元の感触が違った。よく見れば、人の亡骸。

人の亡骸を見た結紀は思わず息が詰まってしまう。人の亡骸は、人間族、鳳凰族などの者達がいた。その中には結紀が殺したであろう者達もいる。

鳳凰族である谷矢の姿もあった。様々な亡骸が一斉に結紀を見る。死んでいる筈の彼らが、全員結紀を見るのだ。その瞳は、憎しみ、殺意が宿っていた。

恨まれても仕方ない。こいういう世界で生きているのだから。そのため結紀はこの屍を踏み、先に進んでいる。

「殺す、殺す、コロス……!」

「……っ……。」

言葉が結紀の頭の中に直接流れてくる。今まで殺してきた人達からおぞましい憎悪が伝わってくる。それでも、結紀は前に進まなくてはいけない。
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