第9章 記録と繁栄
昴輝が話したことは全て事実だ。他の種族に残っていない記録でも、吸血鬼族には残っている記録だ。だとしたら、これまで犠牲になった女性達の数は多くいるだろう。
吸血鬼の力に耐えられず、死んで逝った女性達の遺体はどこかに埋めたという話だ。埋めた場所は、結紀や昴輝でも知らない。じゃあ、女性を使わずにどうやって子孫繁栄していきたのか、という疑問点に戻ってしまう。
「結局、どうやって残ってきたんだよ?」
日向が再び2人に問い掛ける。やがて、結紀の口がゆっくりと動く。
「我達は、薔薇から産まれた。」
予想外の言葉だったのか、日向達は何も言わなかった。続けて結紀は話を進める。
「だが、それには条件があった。その条件は、満月の日、白薔薇に、血を流し込む。その条件を満たせば、数か月後に吸血鬼が誕生する。」
「……じゃあ、条件が揃わないと、絶対的に産まれないってことになるんだな……。」
日向がそんな事を言えば、結紀と昴輝と頷く。
「まぁ、結紀に関しては"特殊"だがな……。」
そう言っては昴輝は、結紀を見る。"特殊"という言葉に、首を傾げる日向達だ。誰もが当たり前だが、そんな事を言うなら気になるのも仕方ない。
ついでというばかりか、結紀の"特殊"について昴輝が説明をしする。
「結紀が産まれた日は、赤い満月の日だ。結紀以外、産まれなかった。俺達、吸血鬼族にとってまさに奇跡だった。だから、お前達に知られないように密かに育てていた。」
赤い満月の影響なのか、結紀に宿る吸血鬼の力は村1番になった。