第6章 頭首
急いで湖に向かった為、時間は掛からなかった。昴輝は湖を見つめる。気付いた時には、結紀の意識がなかった。昴輝の腕の中でぐったりとしている。
昴輝は、湖の方へ一本踏み出したところで、彰が声を掛ける。
「昴輝、僕が傍にいる。君は頭首だ。皆を束ねる役目があるから…。」
「………分かった。任せる。」
「…僕が必ず守るよ…。」
全てを悟った昴輝は結紀を彰に受け渡す。受け取った彰は昴輝に微笑み、結紀を抱えたまま湖へと飛び込む。その行動に日向達が驚きの声をあげる。
「な、何してるんですか!?」
桜井が昴輝に声を掛ける。昴輝はじっと湖の底を見ていたが、やがて湖に背を向けて、日向達には、後で説明をする…と言って、昴輝は日向達を連れて会議室へと戻るのだった。
湖に飛び込んだ彰は、意識のない結紀を愛しそうに見つめて静かに声を掛ける。
「…結紀。僕が傍にいるよ。君を守るから。」
彰は一度、水面の方を見る。だけど、彰は再び結紀の方を見て、頬に唇を近付けキスをする。
「…こんな事したら、昴輝に怒られちゃうかな…。でも、いいか。だって……。僕は結紀の事が好きだから。今度、君が意識ある時に伝えたい、この思いを…。」
彰は、優しく結紀を抱き締めてゆっくりと瞳を閉じるのだった。そして、会議室に戻った昴輝は日向達に何故、湖に行った理由を答える。