第6章 頭首
高尾は左腕を押さえながら言った。
「フード、強いな〜。というか吸血鬼の回復力はすげぇな!」
そう結紀の回復力に関心していたのだ。だが、昴輝と彰は黙る。すると、口を開いたのは伊月だった。
「…とりあえず、怪我人を治療しようぜ。」
「よーし、全員退くぞ。」
日向の掛け声で全員、戻ることになった。だが、結紀が一本踏み出した時に、どくん、っと大きく心臓が跳び跳ねる。結紀の視界がぐにゃりと歪む。
やがて、結紀の体はぐらりと傾く。その異変にすぐ気が付いた昴輝と彰は近くによる。体を抱き締める昴輝は声を掛ける。
「おい、大丈夫か?」
「……っは、頭……首………。」
結紀はやっとの思いで声を出す。だがその声は先程と比べたらかなり弱々しかった。傷は完治している。それなら普通は元気のはずだが、逆だ。結紀の状態を見て何かに気付いた昴輝と彰はお互いの顔を見る。
「…昴輝。これって…。」
「…あぁ、すぐに湖に行かないと…。」
昴輝は、結紀をお姫様抱っこし立ち上がる。その様子をじっと見ていた日向達に声を掛ける。日向達もどこか心配そうな表情を浮かべていた。
「…悪いが、先に会議室に向かってくれ。俺はコイツを連れて湖に行かねぇと…。」
「オレ達もついて行くぞ。心配だからな。」
日向の一言に昴輝は、はぁ…と溜息を付く。だが、日向以外も結紀が心配みたいで、ついて来ることになった。本来なら追い返すところだったが、今はそんな暇はない。