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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)



「………」

「すごいでしょっ?」

「…なぁカーラ。お前はずっと一人で此処にいたのか?」

「うん。必ず迎えに来るから、ここで宝物を見張っていなさいって言われたから」

「それは、お姉さんに?」

「うんっアデーラお姉ちゃんと約束したのっ」

「…そっか」



白けた空に、一筋の光が差し込む。
朝日を迎えた空に、ゆっくりと部屋の中が照らし出された。
暖かい陽の光を背中に受けるルパンと雪は、その場から動かない。
ただ一人、カーラだけが振り返り入口に立つと朝日を真正面から迎えた。



「ほんとはね、お姉ちゃんと一緒にいたかったんだけど…でも、危ないからダメだって。外には怖い兵隊さんたちがたくさんいて、痛いことしてくるからって。兵隊さんたちがいなくなるまで、隠れていなさいって」

「………」

「でも兵隊さんたちは消えたけど、お姉ちゃんも消えちゃったの……ねぇ、お姉ちゃん心配してた?」

「…ああ。でもカーラのお陰で宝物は無事だったって、お姉ちゃんにはオレ達から伝えておくよ。だから後はオレ達に任せな」

「宝物、守ってくれるの?」

「うん。私達が守る。誰にも盗られないようにするから。安心していいよ」

「…そっかぁ…二人なら、安心できるかな」



ふふ、と綻ぶ少女の笑い声。
小さな部屋で反響する声に、雪は思わず振り返った。
見えたのは、眩い朝日を受けた青いドレスの少女。



「雪。ルパン。ありがとう」



眩い朝日に目が眩む。
逆光でカーラの表情は読み取れない。



「なぁに。いいってことよ」



背を向けたまま応えるルパンに、ふふ、とカーラはまた笑った。
どこか安心したような、満足気な笑い声。

朝日を直接浴びながら、雪は額に手を翳して目を細め瞬いた。
瞼を閉じて、そして開く。
一秒にも満たない時間の中で、それは起きた。



「…カーラちゃん…?」



其処に、少女の姿はもうない。

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