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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)



「神田?どうし──」



同じに足を止めるリナリーの声には耳を貸さず。
ぐりん、と即座に振り返った神田のかっ開いた目が、硬直する雪を捉えた。
まるで獲物を嗅ぎ付けた獣のような反応に、思わず雪の肩が跳ね上がる。



(反応怖っ!)

「…あれ?雪?」

「ぉ、おかえりリナリー」

「ただいま…って、雪!女の子に戻ってる!?」



ぱっと花が咲いたように笑顔を綻ばせたリナリーが、神田を追い抜いて雪の下へと駆け寄る。
両手を握り締めて喜ぶ様は、ラビやアレンと同じだった。



「やっぱり雪はこっちの方が良いね!」

「そう?男でも大変楽しそうに着せ替えてたような…」

「そ、それはそれ、よ。でも女の子の服の方が断然可愛いもの。そっちの方が着飾るの楽しいでしょ?」

(…やっぱり着飾られるのか…)

「ほら、神田も」



振り返り問い掛けるリナリーに、雪の体が再び強張る。



(あれ?なんで私、緊張してるんだろう)



ふと自分への疑問が浮かぶ。
神田は雪が男でも女でも関係ないはずだ。
なのに後ろめたさを感じるのは、男であった自分を十二分に受け入れてくれたからか。
男である雪の体を抱きたいと、ああもはっきり告げられたからだろうか。



「………」

「神田ってば。聞いてるの?」



恐る恐る伺った神田の顔は、雪の姿を射抜くように見つめたまま。
他は微動だにせず、ある意味で無表情だった。



「ほら、よく見て。雪よ。神田を迎えに来てくれたんでしょ?」

「えっあ、いやっそれは…って押さないでリナリーっ」

「神田によく見えるようにしてあげてるの。雪、神田のこと呼び起こしてあげて」

「今は起こさない方が…!」

「なんでよ」



ぐいぐいとリナリーに背を押され、否応なしに神田の前に押し出される。
両手を胸の前で交差させて何故か防御の姿勢に入る雪に、じっと神田の目は向けられたまま。



「!?」



ぬ、と不意に六幻を持たない手が伸ばされる。
頭に翳され目の前で影を落とすそれに、反射的に雪は目を瞑った。

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