第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
(そう言えば、ユウの任務ってイノセンス調査だったっけ…見つかったのかな)
司令室に続く薄暗い廊下。
その片隅に添えられたベンチで、ぷらぷらと雪は足を揺らしていた。
五日で済んだ調査任務は、果たして結果は得られたのか。
考え込みながら揺れる足を見つめていると、やがて司令室での報告が済んだ気配がした。
扉の開閉の音で気付いたのではない。
「二度とこんな任務当てんじゃねぇ!」
暴言混じりの罵声。
と同時に壊れんばかりにぶち当たる扉の開閉音。
「もう、神田っ」
「やってられるか!次からお前一人で行けッ」
額に青筋を浮かべ司令室から早足に出てきたのは、紛れもなく雪が待っていた人物。
その後を慌てて追い掛けるのは、同任務に当たっていたリナリーだった。
(うわぁ…仏頂面ってのは本当だったんだ…)
ベンチから立ち上がったものの、神田の下へ向かうのはなんとなく気が退ける。
アレンの言葉は単なる嫌味ではなかったらしい。
「今回は偽情報だっただけでしょっ」
「その癖五日も掛けやがって。なんだあの任務、観光旅行かよッ」
「そんなこと…っ私に言わないでよ!」
幼馴染故か、ブチ切れた神田にも平気で声を荒らげられるリナリーには、時として感心する。
思わずリナリーの意見に頷きながら、雪は声をかけることなく見守った。
大股で進む神田に、小走りで追い掛けるリナリー。
前を見ずに言い合い進む二人は、ベンチの傍に佇む雪に気付かない。
「えっと…お、おかえ」
「大体、神田も何よあの態度。任務中ずーっと喧嘩腰で!ファインダーのマオサさんも困ってたでしょ!?」
「知るか、仲良しごっこじゃねぇんだよッ」
「誰もごっこ遊びなんて言ってないじゃない、連携を取れって言ってるの!」
恐る恐る片手を挙げて自己主張をしてみる。
しかし迎えの言葉は遮られ、足早な二人は脇目も振らず通り過ぎていく。
「り…」
片手を挙げたまま、迎えた言葉は行き場を失った。
(うわあ…こりゃ駄目だ)
足早に去る二人の背を見て、溜息一つ。
落ち着いた頃に声を掛けるべきかと、挙げていた手で手持ち無沙汰に頭を搔く。
と、去っていたはずの神田の足がぴたりと止まった。