第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「───雪…?」
「うん、体調に変化なし。良好だね」
「と言うか普段通りなだけだけど…」
「それが大事なんでしょ」
「雪っ?」
「ファインダーの皆は?」
「それが、こうなったらなったで残念がってて。本当、いつも好き勝手というか」
「あはは、皆も普段通りってことだね」
「雪ッ」
「それで神田は?」
「それがユウにはまだ───」
「雪-ッ!」
「うわッ!?何!」
「ラビッ?」
談話室の一角。
ソファに並んで座る二つのシルエットは、体格も然程差がない。
其処に飛び込んできたのは、赤毛の長身の青年。
隻眼が目敏く見つけたのは、数ヶ月ぶりに拝むファインダーの彼女の姿だった。
「元に戻ってるさー!やっぱ雪はこうでないとな…っはー、ちっこい!」
「あのそれ、なんかムカつく止めて。というか苦しいッ」
元の身長に戻った体は、すっぽりとラビの腕の中。
ぐりぐりと頬擦りするように顔を押し付け歓喜するラビを、雪は鬱陶しそうに押し返した。
細い手足も伸びた髪も高い声も、全ては女である雪。
どうやら薬の効果は沈静化したらしい。
「そういうことは南にやったら!」
「へ?」
「いいよ私は。要らない」
「え"っ」
雪の言葉にはっとしたように隣に目を向けたラビは、笑顔で首を振る南の姿を見てしまった。
今更ながらショックを受けても後の祭り。
「ラビのスキンシップ過多なんていつものことだし。どうぞどうぞ、セクハラ続けて下さい。かーんだー雪が襲われてるー」
「ちょちょちょ!ちょい待ち!これはつい…!雪が女に戻って嬉しかった勢いと言うか…!」
「ラビ、女好きだもんね」
「そう…って違う!いや女の子は好きだけど!」
「あ、私もう仕事行かなきゃ。雪、後で空いた時間に研究室にも寄って。一応、また検査するから」
「うん」
「ま、待つさ南…!いや待って!待って下さ」
「じゃあね」
おろおろと手を伸ばすラビを一蹴して、笑顔で立ち去る南の足は速い。
堪らず無言で項垂れるラビに、雪は肩を竦めた。
「今のはラビが悪い」