第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
大体、あんなに喘いでしまったのも感じてしまったのもユウを求めてしまったのも、絶対薬の所為だ。
絶対。
「ならもう忘れるなよ」
…多分。
「なんで多分!」
「は?」
思わず自分で自分にツッコむ。
何その顔。
なんでそんなほっとした顔するの。
なんでそんな優しい声を出すの。
胸の奥が、なんだか詰まる。
確かに目の前のユウに与えられている感覚に。
…薬の所為にできなくなる。
「…薬の所為だもん…」
悔し紛れに零した言葉は、なんだか言い訳のようにも聞こえた。
「じゃあ次は薬無しでするか」
「…はい?」
「もうあれがなくても、体は覚えただろ」
見下ろしてくるユウの目は、もう獣の鋭さはない。
「俺がいれば気持ちよくなれるだろ」
凄く、自信家な台詞だと思う。
迷いなんて一切ない、さらりと告げてくる声。
余程自意識過剰じゃなきゃそんな台詞、言えない。
「…っ」
なのに、また胸の奥が詰まる。
この感覚は知っている。
きゅうと詰まって、目の前のユウしか見えなくなる。
優しい声で囁きながら、頬を手の甲で撫でて。
甘酸っぱい台詞なんて一つも吐いていないのに、そんなユウの言動一つ一つが私を揺さぶる。
…否定なんて、できない。
「…また、するの…?」
「また今度な。お前の体が回復してから」
握っていたコップを抜き取られる。
そのままベッド横の小棚に水物を避難させると、ユウの体はベッドに沈んだ。
当然のように引き寄せられて、その腕の中に収まる。
半ばユウに乗る体制で裸を重ねるのは恥ずかしかったけど、それ以上の何かに心は包まれて抵抗はできなかった。
…何かじゃない。
充足感だ。
「もう寝ろ」
頭をひと撫でされて、おでこに軽いキスを一つ。
そのまま静かに寝入るユウの寝顔を見つめながら、そっと溜息を零した。
場の空気に流されると言うより、抗えない。
…抗いたくない自分がいることに気付いて。
…大変、まずい傾向。