第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「………そうなのか…」
「いや、そっち私のムスコ。それ見て呼び掛けないで。哀れそうな目で見ないで。勃たないとは言ったけど不能な訳じゃないから。多分」
「は?じゃどういう意味だよ」
「だ、だから…AV観ても勃たなかったのに、風呂場でユウの体も見慣れてるし…ここでも勃たないよ、ってこと」
「………ほお」
「え。なんでそこで笑うの。怖い」
哀れんだかと思えば好戦的な目で笑う。
馬乗りに見下ろしてくる神田の視線に恐怖を感じて、雪は背筋を凍らせた。
「俺相手に勃たないってか。言ったな」
どうやら神田の時に挑発に乗り易い性格を、後押してしまったらしい。
思わず後退りたくとも、背後は壁。
男になっていても、身長も体格も勝る神田に腹部を跨がれていれば、簡単に逃れることはできない。
「安心しろ、気持ちよくさせてやる。学習はした」
「は、はい?(学習?)」
「準備が終わってなかったから、まだ手を出さないつもりだったけどな。最低限あればいいだろ」
「はいっ?(準備って何!)」
突如聞かされた情報を処理することで精一杯な雪を余所に、神田は机の隅に追いやっていたワイングラスを掴んだ。
中に残されていたボルドーワインを一気に煽ると、目の前の雪の顎を掴み口付ける。
「んぅ…ッ」
咥内に流れ込んでくる渋みのある液体。
ワインと共に押し入ってくる熱い舌に、堪らず喉を鳴らして飲み込んだ。
それでも一筋、二筋と、飲み干せなかったワインの雫が雪の唇の端から伝い落ちる。
「ん、んく…」
「欲しがってたろ。遠慮せず飲めよ」
「はァ…それ違…ん、」
否定の言葉を述べる前に、再び口を塞がれる。
急にアルコールを摂取した所為か、くらりと頭が揺れる。
甘さと渋みを感じさせる舌の味に、鼻の抜けた声が漏れた。
性別が変わろうとも、覚えたキスの味は変わらない。
親しんだ神田の舌先の愛撫に、頭の隅が微かに痺れる。
(あ。ユウの、手)
触れていると否応無しに男だと認識させる骨張った大きな手が、優しく頭を撫でる。
長い指が髪の毛をくしゃりと掴み、耳から頬から触れていく。
そわりと、肌が騒いだ。