第4章 〜一味との時間 2日目〜
発砲された弾は私に当たることはなく、すべて壁にぶち当たる。
パチンッと指を鳴らすと、海兵達が持っている銃身が一つ残らず凍る。
エ「そのまま引き金引いたら、爆発しますよ」
氷の壁を解くと、めり込んでいた弾も全て海の中に沈む。
エ「これでもまだ、私を連れて行くと言いますか?」
言ってにっこりと笑う。
が、その目に笑顔など微塵も浮かんでいない。
寧ろ哀れむような、悲しく冷たい感情がただただあるだけだった。
中「私は諦めが悪くてね」
エ「諦めが悪いのは私もよ」
中「海軍の何が嫌いだ?」
エ「…………全部」
辺りの温度が一気に下がったような気がした。
ような気がしただけなのに、中将の腕には鳥肌がたっていた。
エ「海軍だって人間の集まり、欲もあれば汚いところだってある。
それこそ掲げている正義だって、人によって重さは違う……。
それによって出来る隙間は、人の人生を大きく左右する、それが気に食わない」
辺りに漂う肌寒さが一気に強くなる。
これは気のせいじゃない、彼女の「能力」だ。
中「余程海軍が嫌いなようだな」
エ「当たり前だ、私が一生終われる身になったのも、元々海軍のせいだしな」
彼女の言葉には棘がある。
それも容赦のない、美しく儚い棘。
中「君は美しいな、どこぞの馬の骨に貰われるには少々勿体ないくらいだ」
エ「お褒めいただきありがとう」
棘のような視線が刺さる。