第4章 〜一味との時間 2日目〜
肩を掴んだまま振り向かせ、私の顔を見た瞬間にシャンクスは固まった。
エ「シャンクス………」
シ「っ!!?」
目に溜めた涙を溢しながら、シャンクスのことを愛称ではなく実名で呼ぶ。
余程予想外だったのか、顔に汗を浮かべながら目を白黒させている。
おまけにその顔は耳まで真っ赤である。
エ「ぅ、っ……シャンッ、クス………」
シ「わわっ!?ちょ、おいどうした!!?」
泣き顔を見られたくなくてシャンクスのシャツの胸元を掴み、顔を埋める。
ここまで来ると自分でも歯止めが利かない。
シャンクスがぎこちない手つきで私の背中をさする。
嗚呼、あぁ、そうやって優しくするから、悲しくなる、苦しくなる。
離れられなくなる……。
正直、シャンクスはどうしたらよいのかわからなかった。
エミリが自分の前で泣くのも、いつものような愛称ではなく実名で呼ばれたのもこれが初めてだ。
愛称じゃなく実名で呼ばれたときには思わずドキッとした。
エ「シャンク、……ごめ………」
シ「だ、大丈夫だ!大丈夫だからちょっと落ち着けって……!!」
今まで必死に隠してきた。
海賊に対する不快感も、シャンクス達への本当の気持ちも。
幼いながらに苦しみもがき続け、自尊心ばかり大事にして人前でも、一人でも泣かなかった。