第4章 〜一味との時間 2日目〜
エ「……」
海軍は信用出来ないし、海賊なんてもっての他だ。
まだ少し痛む傷を押さえながら体を引きずるようにドアまで歩く。
助けてもらったことは事実な為お礼は言わなければなるまい。
海軍ならばまだ情報が回っていないのだろう。
なんせ私のことを知っている中将は軍艦ごと氷漬けだ。
情報が出回る筈がない。
海賊も同じようなものだ。
こんな瀕死のボロ雑巾のような子供を助けるなんて、頭が致命的にバカであるか、よっぽどお人好しかのどちらか位だろう。
まぁロリコンという可能性もあるが……。
ドアを開けるとすぐ甲板へと出た。
たくさんの男達が忙しそうに動いていた。
みんな違う服を着ていることから海軍ではないとわかる。
エ(チッ、海賊の方か……)
甲板にいたうちの一人が部屋から出てきた私に気づいて近づいてくる。
べ「起きたか」
エ「っ、っ…あの……」
煙草をくわえた少し人相の悪い男の人。
いざ海賊を前にすると足がすくみ声が出なくなってしまう。
ベ「傷は痛むか」
エ「少し……」
警戒しながら静かに口を開く。
ベ「そんなに警戒するな。俺はベン・ベックマンだ、よろしくな」
警戒して距離を開けている私の頭をポンと撫でる。
海賊に……という抵抗はあったが、なぜだか嫌な気はしなかった。
ベ「歩けるか?お頭んとこ行くぞ」
ベックマンの後にくっついて歩く。
やがてお頭と言われていた男の前で止まる。
ベ「お頭、目覚ましたぜ」
お頭と呼ばれた男がこちらに気がついて振り向く。
黒い闇夜のようなマントに紅の髪がよく映えている。
シ「お、気がついたか。気分はどうだ?」
エ「あまりよくない……です」