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【目を背ける話】

第2章 出会い


徒歩約10分の駅。

仕事帰りや、飲み会帰りの人達がたくさんいた。

......人がいる。

あんなに人の嫌な部分ばかり見てきて、人間なんてって思ってたはずの僕も同じ人間で、人を本当に嫌いになることは難しかった。

駅前のベンチに腰掛ける。

けど、やっぱりすることなんて無くて隣のベンチをなんとなく見る。

い長袖のジャージを着た人と、長袖の変わったデザインの服を着た人が携帯を覗いていた。

暑くないのかな...。

今は夏真っ只中、長袖で暑くないはずがない。

いや、でも2人とも肌の色白いし日焼け対策なのかな。

うーんでも男の人だしなあ。

今流行りの乙男なのかな...。

ぼーっとそんな事を考えると肩を叩かれる。

突然のことにびっくりして顔を上げると知らない男の人だった。

この人は、普通に半袖だなあ......。

なんて呑気に考えながら、なんですか?と尋ねようと僕が口を開く前に相手が声をあげた。

「今一人?」

「へ?はあ、一人ですが」

だからなんだと言うのか。

「こんな時間に女の子一人なんて危ないよ?」

「あ、大丈夫ですご心配なさらず」

嫌な予感がして早口でそう言うと、立ち上がって家の方へ歩く。

ていうか、コイツ今「女の子」って言いやがったな。

「おーい、どこ行くの?」

小走りで追いかけて来たナンパ男に腕を掴まれグイグイと引っ張られる。

「ちょ、やめろよ」

掴まれた腕を振りほどけなくて、自分の非力さが嫌になる。

段々と人気のない場所へ連れて行かれる。

運動とかしとけば良かった。

でも僕男だし、男にナンパされるとか思わないじゃん。

ああもう、また目が痛い。

なんなんだよこの人、怖い。怖い。

怖いよ、誰か助けて......。

もうこんな人がいるなんて知りたくないんだよ。

見たくないんだよ。

「ねえ、その子嫌がってるよ......」

僕が諦めてその人から目を背けた瞬間、そんな声が聞こえた気がした。



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